専門家によるドライブコラム

安全運転テクニック(3) -夜道・雪の日の運転-

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秋の終わり頃から春先までは日も短く、山奥などにドライブに行くと突然の雪道に遭遇するかもしれません。そこで秋から冬にかけての運転術ということで夜道、雪の日の運転について考えてみましょう。

夜間運転での注意点

まず、夜間の運転で気をつけなくてはいけないのは、視界の悪さです。街灯もないような山奥で、ヘッドライトだけを頼りに走行した経験をお持ちの方なら、昼間は見えていた物が、ヘッドライトや街灯だけでは見えなくなるのは簡単に想像できるでしょう。

まず、ヘッドライトで照らされない右側から横断してくる歩行者や、無灯火の自転車などに注意が必要です。左側通行の日本では対向車に対する配慮から、まっすぐよりもやや左側を多く照らすように保安基準が定められているためです。反対に自転車や歩行者側はライトをきちんと点けて、反射材などで周囲から確認しやすい装備を身につけておけば安全性は上がるといえます。

これは自動車も同様です。最近は昼でも夜でも明るく浮かび上がるメーターが増えてきたために、街灯の明るい道路を走る際にヘッドライトを点け忘れているドライバーが増えています。ヘッドライトは自分の視界のためだけではなく、周囲から発見してもらうための安全性の向上にもつながることを理解しなくてはなりません。

ただしハイビームなどになっていると、対向から来たクルマの迷惑になるだけでなく、思わぬ第三者を危険にさらすことにつながります。たとえば、交差点で右左折する際に、横断歩道を渡る歩行者の発見が遅れることがあります。これは蒸発(グレア)現象と呼ばれ、右折あるいは左折する先の対向車のヘッドライトがまぶしいために、対向車の前で照らされている歩行者がライトの光に溶け込んでしまうことが原因です。

そして、もうひとつ注意しなくてはならないのは、深夜の運転は交通量の少ないこともあって、ついつい速度も上がりがちなことです。この上がった速度に対して、夜間の注意力の低下が事故の危険を招きます。もともと人間は昼間活動するのが普通の生き物です。とくに通勤でいつも通っている道の場合は、ついつい、いつもどおりに見えているという錯覚に陥りがちです。日没が早く、日の出も遅い季節はいつも以上に注意が必要なのはこういったことが理由です。

雪の日の運転

次に雪の日に走行する際の注意点について書きましょう。もしも雪上を走ることがあらかじめわかっている場合は、必ずスタッドレスタイヤを装着しましょう。ここで重要なのが、SUVなどが装着しているオールシーズンタイヤは、スタッドレスタイヤではないということです。スタッドレスタイヤは、夏用のタイヤはもちろんオールシーズンタイヤとも、別物と考えた方がいいかもしれません。詳しくはカーディーラーか整備工場に確認をするといいでしょう。

少ししか雪道を走らないから、とタイヤチェーンなどを検討している方もいるでしょうが、チェーンはあくまでも緊急用と考えた方がいいでしょう。慣れない雪の上で徐々に路肩に増える雪の様子を見ながら、チェーン装着のタイミングを計るのは容易ではありません。

次に必要な装備はスノーブラシです。一晩駐車している間に積もった雪を素手で取り除くのは大変なことです。ただしブラシがあったとしても、フロントウィンドウの雪を取り除いて、天井の雪を乗せたまま走り出してはいけません。次第に雪が溶け、やがて天井と雪の間に水膜ができます。ブレーキを踏んだ瞬間、天井に積もった大量の雪がフロントウィンドウをすべて覆い、最悪の場合、視界がまったくなくなります。

さらに、もしも準備の余裕があればウィンドーウォッシャーを冬用のマイナス30度まで対応したものに入れ替えておくと安心でしょう。多くの雪道には融雪剤が撒かれており、前車が巻き上げた雪が徐々にフロントウィンドウを汚していきます。もしもウォッシャーが凍結していては、安全な視界を確保できません。

さて、実際に雪道を運転する際の注意としては、急のつく動作は厳禁です。急発進、急ブレーキ、急ハンドルです。雪の上の摩擦係数は乾いた舗装路のおよそ2~3割にしかなりません。アイスバーンと呼ばれる雪国市街地でよくある磨かれた氷上では1割程度です。そんな状況で急な動作は車体の不安定さを招きます。タイヤが空転しないように加速し、ブレーキはハンドルがまっすぐの状態でかけるようにします。交差点を曲がる際には、ハンドルをきり始めてクルマが曲がり始めるのを感じてからきり足して行きましょう。

路面状況に注意しましょう

そういった動作を基本として、あとは路面状況を見定めることが大切です。前述のアイスバーンは単なる濡れた路面と見分けがつきにくいものです。あるいは昼間でも日陰の部分は凍結している可能性があります。路面状況の判断は慣れないと難しいですが、たとえば山の北側は日が当たらないため凍結していることが多いといえます。

橋の上やトンネルの出入り口は特に用心しましょう。それまでの路面状況から180度転換するつもりで、慎重に走行してください。橋の上は下を流れる川が橋を冷やすため凍結している可能性が高いです。さらに坂道を通るのはできるだけ控えましょう。上りは雪でスタック(立ち往生)しやすくなり、下りはブレーキが利かずに事故につながります。特に四輪駆動車の場合、上りはたしかに安定していますが、下りでは車重の重さから逆に安定しないことが多いです。

いずれにせよ、雪の日の運転はまずタイヤなどの装備が大切です。もしも不十分な装備で雪道を走行することになってしまったら、無理をせずクルマを安全な場所にとめて助けを求めましょう。

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コラムニスト 清水和夫 (モータージャーナリスト)

筆者の写真

環境問題という点から車とエコについて解説します。

国内外の耐久レースで活躍する一方、モータージャーナリストとして自動車の運動理論や安全性能を専門にしつつ、最近ではクルマ好きが考える安全と環境をライフテーマとして執筆しています。

【URL】 http://kaz-administration.blogspot.com/
【メディア】 「ディーゼルこそが、地球を救う」(ダイヤモンド社)、「車安全学のすすめ」(NHK出版) 、「モーターマガジン」「ENGINE」「GENROQ」などで連載中、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレターとしての出演も多数。

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